旅する石ころ

夏のある日。おじいちゃんに連れられて、犬鳴山へ川遊びに出かけた。冷たくて心地良い水に小さな足を泳がせながら、彼女は川辺に並んだ石を眺めていた。どの石もころんと丸くて、触れるとさらさらしていて気持ちがいい。冷たい重さも好きだった。どれかひとつ、記念に持って帰ろう。そう思い、彼女は中でもお気に入りの、まあるくて小さな白い石を手に取った。

おじいちゃんにその白い石を見せた時、彼は少し申し訳なさそうにこういった。「ごめんねえ、この子は連れて帰れん。この石がどうして丸くなったかわかる?どこかのお山で生まれてから、角が取れるくらいにいろんな海や川を転がってきたからなの。長い旅の途中で、今はここでご機嫌にしているんだから、この子の旅の邪魔をしちゃいかんよ。」

つまらないなと思いながら、彼女は石を川辺に戻した。この子はこれからどこへ行くのだろう。